流れてきたモノは桃だった。それも大量の桃だ。
次から次へと流れて来る。その数ざっと1,000は越えている。
川はあっという間に桃で埋め尽くされ、飛び込む隙はわずか。
救助の際に「黄桃せよ!黄桃せよ!…あ、応答(テヘッ)」とかオヤジギャグを言われるのではないか?と思うと少し笑みがこぼれた。
さらに新聞の見出しに「河川に桃で圧死した男性遺体」の文字が並んでいることを想像すると、自然と死ぬ気は失せた。
そんなこんなで正気に戻ると、扁桃腺が痛むことに気が付いた。
さっきまで見えていた目の前のナニは、高熱で見えていた幻覚のようだ。
この大量の桃も幻覚なのだろうか。
いや、これは現実に違いない。
こんなに大量の桃の幻覚をみるはずがない。
豪雨の中、大量に流れる大きな桃を眺めながらどうすべきか考えていた。
JAに連絡すべきか警察か消防か…
ただ喉が痛く、電話で通報するにしても酒焼けのような声になってしまう。
どうしよう。